<設問1>
第1 Dの主張
1 Dの請求の内容
甲4階及び甲5階の明渡し
2 訴訟物
(建物)賃貸借契約の終了に基づく目的物返還請求権としての(甲)建物明渡請求権
3 原因
(1)Aは、2021年5月20日、Bに対し、甲4階及び甲5階を以下の条件で賃貸し、引き渡した*1。
①目的 スポーツ・ショップの営業
②期間 2021年6月1日から5年間
③賃料 1ヶ月あたり100万円。毎月25日までに翌月分を支払う。
(2)Bは、2022年5月15日、甲5階を賃料100万円(翌月分を前月25日までに支払う)、期間を同年6月1日から4年間として、Cに賃貸する契約を締結し、引き渡し、Cは、改装の上、スポーツ・バーの営業を開始した*2。
(3)Aは、2023年3月1日、Dに対し、甲を代金5億円で売った*3。
(4)Dは、甲についての所有権移転登記を経由した*4。
第2 B及びCの主張
1 反論の内容
(1)、(3)及び(4)は争わないものと思われる。
※また、605条の2第2項前段該当性は、【事実】からは不明である。
(2)について、その事実自体は争わないものと思われる。
そこで、
❶ 信頼関係不破壊の主張
❷ Dは、甲の売買にあたり、事前の案内と異なり、甲5階がスポーツ・バーとして利用されていることを知ったが、人気があるように見えたので、気に入って咎めていないことから、未だ賃貸人ではないとしても、賃貸人の地位を継承以降も許容する旨の黙示の許諾があった。
第3 両当事者の主張の妥当性
>>>略
<設問2>
第1 Cの主張
1 Cの請求の内容
Cが甲5階の補修費用として支出した200万円の支払請求
2 訴訟物
民法608条1項に基づく必要費償還請求権
3 原因
(1)Bは、2022年5月15日、Cに対し、甲5階を賃料月額100万円(翌月分を前月25日までに支払う)、期間を同年6月1日から4年間として、Cに賃貸する契約を締結し、引き渡し、Cは、改装の上、スポーツ・バーの営業を開始した。
(2)2023年6月1日、大地震の発生により甲の屋上部分に亀裂が生じ、甲5階は雨漏りをするようになった。
(3)Cは、Bに対し(2)の修繕をするように求めたが、応じなかった*5。
(4)2023年6月10日、Cは、ある業者に依頼し、200万円を支払って、屋上の補修を行った。
第2 Bの反論
1 本件に限らず、想定される賃貸人の反論の内容
(1)606条1項本文にいう「賃貸物の使用及び収益に必要な修繕」に当たらない。
Bが事実上倒産し、無資力であるケースでは、まず、BのDに対する修補請求権を被代位権利としたCがBに対して有する修補請求権(被保全債権)の債権者代位権行使が考えられる。
また、他の方法として、Bが事実上倒産し、無資力であるケースでは、Cとしては、賃料との相殺することで支払った補修費用を回収する*7。
*1:「建物」賃貸借より、第三者対抗要件を具備(借地借家法31条)。
*2:無断転貸の事実(612条1項)
*3:「借地借家法…第31条…の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合」における「その不動産が譲渡されたとき」(605条の2第1項)に当たり、「その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転」(D)したことになる。
*4:「第1項…の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。」(605条の2第3項)
*5:607条の2各号いずれにも当てはまる?
*6:本件では、必要な修繕であることを認定した上で、いずれの反論にも理由がない(なお、記載例には本件に何ら関係がない事項も含まれる)。
*7:BC間の賃貸借契約は、202年6月1日から4年間とされているため、補修費用を回収するだけの賃貸借期間が残存している。