最一判平成9年6月5日民集51巻5号2053頁百選Ⅱ25事件[供託金還付請求権確認・供託金還付請求権取立権確認請求事件]

 1.判旨

「譲渡禁止の特約のある指名債権について、譲受人が右特約の存在を知り、又は重大な過失により右特約の存在を知らないでこれを譲り受けた場合でも、その後、債務者が右債権の譲渡について承諾を与えたときは、右債権譲渡は譲渡の時にさかのぼって有効となるが、民法一一六条の法意に照らし、第三者の権利を害することはできないと解するのが相当である(最高裁昭和四七年(オ)第一一一号同四八年七月一九日第一小法廷判決・民集二七巻七号八二三頁最高裁昭和四八年(オ)第八二三号同五二年三月一七日第一小法廷判決・民集三一巻二号三〇八頁参照)。」

 

 2.平成29年債権法改正後の解釈

 法466条2項より、債権譲渡の効力は、その効力を妨げられないから、本判例のように債務者の承諾によって譲渡時に遡求して有効となることはなくなる。そのため、116条ただし書がこのような事例では.適用されることがない。

 もっとも、預貯金債権については、従前の運用が引き継がれている(466条の5第1項)ため、本判例がなお妥当する。

 

 3.その他

 平成23年司法試験担当式試験第28問題肢1出題