会社法(423条・429条)要件事実

1.423条1項責任

 (1)訴訟物

 X株式会社の(取締役)Yに対する会社法423条1項に基づく損害賠償請求権

 (2)請求原因

 ア Yは、請求原因イ及びウの当時、X株式会社の役員等であった

 イ Yの取締役として行われるべき具体的任務(職務)の特定及びその内容

 ウ Yが請求原因イに関し、実際に行った行為(任務懈怠)の特定

 エ X株式会社の損害の発生及びその数額

 オ 請求原因ウとエとの間に社会通念上の因果関係があること

 (3)抗弁原因以下

 ①帰責事由の不存在(428条)

 ②過失相殺(反対論あり)

 ③損益相殺

 ④総株主の同意による免除

 ⑤消滅時効

 

2.429条1項責任

 (1)訴訟物

 XのYに対する会社法429条1項に基づく損害賠償請求権

 同債務の履行遅滞に基づく損害賠償請求権

 (2)請求原因(※1)

 ア Yは、請求原因イの当時、A株式会社の役員等であったこと

 イ Yがその職務執行に関し、任務を懈怠したこと

 ウ Yは、請求原因イの行為に関し、悪意又は重大な過失を基礎付ける評価根拠事実

 エ Xが第三者であることを示す事実(※2)

 オ Xに損害が発生したこと及びその数額

 カ 請求原因イの行為と請求原因オの損害発生との間に社会通念上の因果関係があること

 キ 請求原因オの損害の発生以降に請求をしたこと(※3)

 (3)抗弁原因以下

 ①重過失の評価障害事実

 ②帰責事由の不存在

 ③過失相殺

 ④損益相殺

 ⑤消滅時効

 

※1法429条2項に基づく場合、請求原因では悪意又は重大な過失を基礎付ける評価根拠事実は抗弁に位置付けられる(429条2項柱書本文・ただし書の関係)。

※2株主の間接損害事例について通説である「第三者」該当性ではなく、損害論で検討する見解では、不要(?)

※3判例・通説によれば、429条1項に基づく役員等の損害賠償義務は、法がその責任を加重するために特に認めたものであって、不法行為に基づく損害賠償債務の性質を有するものではないから、遅滞に陥る時期は、加害行為時ではなく、請求時であるとされている。(最判平成元年9月21日判時1334号223頁)